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January 31, 2005

[アメコミ] "Coup d'Etat"

"Authority: Revolution"の予習として読んだ。

Coup d'Etat: Sleeper
Coup d'Etat: Stormwatch Team Achiles
Coup d'Etat: Wildcats ver.3.0
Coup d'Etat: Authority

の4部からなっている。

[ストーリー]
 米国はBleedの制覇の欲望に駆られ、TAOから奪い取った探査プローブ(実はTAOの謀略で、素性の知れないものをつかまされた)をBleedに送り込む。しかし、プローブはBleed内で大破し、そのあおりで異星人の次元航宙船を撃墜してしまう。巨大な次元航宙船がフロリダ半島に墜落して壊滅状態になった上に、異星人の報復攻撃の危機が地球に迫る...
 この事態にAuthorityのジャック・ホークスムアは米国政府の愚行を批判し、自ら米国を支配下に置くことを宣言する。

ということで、Authorityのパートでは異星人との交渉が描かれたりもするが、読みどころはAuthorityの「クーデタ」に他のチームがどのように反応したか、という部分。特に、Team AchilesがAuthorityとは正反対の価値観を持っていて、しかもそのどちらにも共感できる、というあたりはスリリングだ。

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[小説]「BGあるいは死せるカイニス」

BGあるいは死せるカイニス
著者: 石持浅海
創元ミステリ・フロンティア
ISBN: 448801707X

ミステリの叢書から出ているけど、これはSFだね。

ジャンル分けには意味がないという人もいて、基本的には賛成だけれども、読み手としてはジャンルというラベルを選択の基準にする場合も多いので、やっぱり書いておく。

特殊な(SF的な)設定の中で論理的なパズラーを展開する、という、西澤保彦的な小説と混同されるのは、本作にとっては不幸なのではないかという気がするからだ。西澤作品で目指しているものは「論理をつきつめていった先のあっと驚く真相」であり、そのプロセスを際だたせるために特殊な設定が採用されるのに対して、本作はこの設定そのものに作者の主張があると思われる。逆に言うと、論理的な展開や「あっと驚く真相」は、さほどのものではないとも言える。

女子高校生の視点で描かれるSFスリラーとしての魅力的な作品なのだ。とてもまっとうな(欧米的な)SFなので、日本でSFが浴びてきたいろいろな批判をそのまま浴びてしまうのかもな、と余計な心配をしてしまうのだが。筒井康隆氏のいうところの「良い意味での視野狭窄」というものがこの作品にもあって、それは多分大切な要素なのだけど、SFになれてない読者には「つっこみどころ」に見えてしまうのだろうし。

それにしても、こういう小説を、もしSFとして売り込もうとしたとしても、なかなかマーケットがなさそうなあたりが寒い。

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January 24, 2005

[アメコミ]CBRピックアップ

Image 4月新刊

(要チェック)
DEATH JR. #1(of 3) W:Gary Whitta A:Ted Naifeh
ULTRA: SEVEN DAYS TP W:Joshua Luna & Jonathan Luna A:Jonathan Luna
> もうTPが出るんですね。
Rising Stars: Voices of the Dead #1 (of 6) W:Fiona Avery P:Staz Johnson
Magdalena vs. Dracula: Monster War #1 (of 4) W:Chris Golden and Tom Sniegoski A:Joyce Chin

(定番)
JACK STAFF #9 W&P: PAUL GRIST

あんまりImageは読んでないなあ

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January 20, 2005

[アメコミ]CBRピックアップ

DC 4月新刊

(要チェック)
BATMAN: JEKYLL & HYDE #1 (of 6) W: Paul Jenkins A: Jae Lee
> アートは最初の3冊がJae Lee、残りがSean Philipps
SEVEN SOLDIERS: KLARION THE WITCH BOY #1 W: Grant Morrison A: Frazer Irving
SEVEN SOLDIERS: ZATANNA #1 W: Grant Morrison A: Ryan Sook & Mick Gray
> DCの7人のヒーローについてのミニシリーズが互いに関連しあうというモリソンの新企画の第2弾
THE SPIRIT ARCHIVES VOL. 16 HC W&A:Will Eisner
> 先日亡くなった巨匠の代表作の集成
VERTIGO: FIRST TASTE TP
> 4冊分で$4.99というお試し企画(でもセレクションが...)

(定番)
DETECTIVE COMICS #805 W: David Lapham and Jon Lewis A: Ramon Bachs & Nathan Massengill and Jeff Parker
> "City of Crimes" part 5
LEX LUTHOR: MAN OF STEEL #2 (of 5) W: Brian Azzarello A: Lee Bermejo
> クリプトン星からの侵略者に立ち向かうヒーローLex?
THE AUTHORITY: REVOLUTION #7 W: Ed Brubaker A: Dustin Nguyen & Richard Friend
EX MACHINA #10 W: Brian K. Vaughan A: Tony Harris & Tom Feister
TOM STRONG #32 W: Michael Moorcock A: Jerry Ordway
> ムアコックが書いていたのには気がつかなかった
HUMAN TARGET #21 W: Peter Milligan A: Cliff Chiang

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January 16, 2005

[古典]「アラビアン・ナイト1」

アラビアン・ナイト1
訳者:前嶋信次
平凡社 東洋文庫 (71)
ISBN: 4582800718

NHK教育テレビの「アラビア語会話」に「アラブの響き」というコーナーがあって、そこでアラビアン・ナイトの朗読が行なわれている。それがとても美しいので、アラビアン・ナイトに興味を持った。

この東洋文庫版はアラビア語から直接翻訳されたものということで、たとえばマルドリュスによる仏語訳の翻訳である岩波文庫版とは確かに違っている。

ただ、その違いが
・底本の違いによるもの
・仏語訳の段階での意味のずれ、あるいは編集操作
・邦訳のスタイルの違い
のいずれによるものかは判然としない。

少なくとも、この東洋文庫版が語りの口調に非常に手をかけていることは間違いない。たとえば第18夜に出てくる老婆のセリフの一つで岩波文庫版では
「私のところには一人の孤児(みなしご)の若い娘がおりまして、今夜はその婚礼の夜でございます。」
となっているところが、東洋文庫版では
「うちには両親のねえ娘っ子がいるだが、今夜はその婚礼の式をあげ、ご披露の宴をするわけでごいす。」
という具合。アラビア語には何かこうした「語り」を呼び寄せるものがあるのだろうか?

ともかくも、「味のある」読み物になっていることは確か。

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[小説]「ぼくのキャノン」

ぼくのキャノン
著者:池上永一
文藝春秋
ISBN: 4163224300

これぞファンタジィ

この著者らしく、破天荒な登場人物たちはみな意志がつよく背筋が伸びている。敵役も無茶苦茶な人物だが強固な意志の持ち主。軟弱者は池上小説の世界では生きていけない。

ただ、「レキオス」や「夏化粧」ではストーリーが超現実的でも小説世界はリアルな肌触りを失なわなかったのに対して、この小説では小説世界もファンタジィの力でユートピアを指向する。

苦い現実と向いあってそれを変える力を持ってこそ、ファンタジィの意味があると思うから、これこそファンタジィだと思う。それは同時に現実の苦さを強烈に告発するものでもあるのだが。

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January 12, 2005

[小説]「浪漫的な行軍の記録」

浪漫的な行軍の記録
著者:奥泉光
講談社
ISBN: 4062115182

太平洋戦争中、何処とも知れぬ南方の島で行軍を続ける一兵士の意識を辿った小説。

といえば間違いではないと思うけれど、この言い方から受ける印象と実際の小説とはずいぶんかけ離れている気がする。確かに、悲惨な行軍の実態は時に過剰なほど克明に描写されるが、その一方で話者の意識は時空を越えて飛躍し、妹の介護を受けながら従軍の経験を回想する老人になったりもする。

日本軍の兵士の遺体が累々と横たわる川辺と、のどかな花見の光景が二重写しになるなる場面は恐ろしくも美しい。

片足をひきずりながら、シニカルな批評をする人物が暗喩しているものはわりとわかりやすいが、物語の終盤で登場する「大尉」がいったい何者なのか、は私には謎のままだ。

「大尉」の「命令」が出エジプト記32:26以下のもじりであり、途中に現れたモーセへの言及が反映しているようなのだが...?

時間をおいてもう一度挑戦してみたい。

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[小説]「ペンギンの憂鬱」

ペンギンの憂鬱
著者:アンドレイ・クルコフ
訳者:沼野恭子
新潮クレストブックス
ISBN: 4105900412

ペンギンがかわいい。

村上春樹と似ているところがあるという指摘があるが、たしかに読んでいる間の心地よさには共通するものがあるような気もする。

ただ、読み終えた後には何ともいえない不安感が残る。

紹介文には「不条理」という記述があるが、「理屈が全然通らない」というような不条理ではない。理屈は何となく推測できる(読者にも、主人公のヴィクトルにも)。けれどもそれが説明されることはないし、いつか説明されるであろうと期待することもできない。「自分にはわからない所でそれなりの理屈に従ってものごとが動かされていて、しかし、その全体像を把握することは決してできない」という不安感は、もちろん「過渡期のウクライナ」という舞台と密接に関わっているのではあるが、「だから自分には無関係」と言い切れない普遍性があると思う。

裏表紙などに「ロシア文学」と書かれているせいか、アマゾンのカスタマーレビューでも「ロシアの」と書いている人が何人かいた。でも、これは「ウクライナ文学」だし、著者もそういうこだわりはあると思うのだけど(少なくとも国家としてのロシアとは関係ないはず)。もちろん「ロシア語の」小説であることも事実だし、正直なところこの辺の機微はわからないので、これ以上は言えない。

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